介護職員に選ばれる事業所とは

介護人材の需給ギャップ

厚生労働省が6月24日に発表した「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」によると、2025年に必要とされる介護職員数は約253万人。

これに対し、今後の増員見込みは約215万人となっており、38万人が不足すると想定されています。

国の施策に対する現場の声

必要とされる人材数に対し、思うような増員が見込めない「需給ギャップ」を埋めるための対策として、厚生労働省は「業務内容の魅力アップ」「業務負担の軽減」とあわせて「2025年に向けた必要な増員数の推計」が必要だと促していますが、これに対して現場サイドからは、「推計をしている場合ではない、依然として低賃金であることが最大の課題であり、従業員の処遇改善をさらに進めるべき」との声が上がっています。

処遇改善加算の改定

処遇改善加算の改定については、今年4月に加算区分が5区分へと分けられ、その加算額が事業所に給付されることとなりました。

これにより、介護職員1人あたり、月額1万円相当の給与アップが見込めるはずなのですが、現場職員からは「1万円もアップされていない・・・」という不満の声も出ているようです。

処遇改善加算改定に対応するための事業者の取り組み

月額1万円相当の給与アップを実現させるためには、「キャリア要件Ⅰ~Ⅲ」を満たす必要があります。

キャリア要件Ⅰ~Ⅲの主な内容は以下のとおりです。

・キャリアに応じた役職、職務内容が定められており、且つ、就業規則等の書面に明記し周知されていること。

・介護職員のキャリアアップに関する計画がなされていること。
具体的には「研修機会の提供」「OJTやOFF-JTを通じて職員の能力評価を適正に行うこと」「資格取得のための支援を行うこと」のいずれかの計画を作成し、それらが職員に周知されていること。

・昇給の仕組みを導入し、職員に周知していること。

介護職員に選ばれる事業所

上記Ⅰ~Ⅲは、有能な介護職員を育成し、継続して勤務してもらうための評価制度や支援制度を設けていた事業所様においては、難なくクリアできる要件ですが、明確な人事考課や育成制度の整備になかなか着手できずにいた事業所様においては、まずは事業所内の制度作りから始めなければなりません。

有能な介護職員は、自身の能力を適正に評価してくれる職場を求めます。

「人材育成や人事考課制度が整った事業所」

「キャリア要件を難なく満たし、今後もさらなる改定が見込まれる処遇改善加算に速やかに対応できる(=給与アップに即反映される)事業所」

このような事業所が、優れた能力を持つ介護職員に選ばれることでしょう。

処遇改善制度を活用し、介護職員の給与アップを図るための、「人材育成制度とキャリアアップ支援制度の整備」が、小中規模の事業所様においても、喫緊に取り組むべき課題になっていると感じます。