人材不足の解決策として期待されるAI導入について

介護現場でのロボット導入が急増

介護現場の人手不足を解消する打開策として、大いに期待されている介護ロボットの導入。

国が多額の補助金を出したこともあり、介護ロボットを導入する施設が急増しており、注文対応に追われるメーカーもでてきているようです。

さて、一括りに「AI導入」「介護ロボット導入」と言われがちですが、実際に介護施設のどのような場面でAIを搭載したロボットが導入されているのでしょうか。

また、今後の課題についてもお話ししたいと思います。

介護ロボットが待ち望まれている理由とは?

介護ロボットの導入を期待してるのは、人手不足に悩む経営者だけではありません。介護スタッフや介護を受ける利用者もロボット導入を待ち望んでいます。

そこには、どのような心理的理由があるのでしょうか。

利用者側がロボットによる介護を望む理由

「介護は人の手ですべき」「人の手をかけるのが真心」といった信念を持つ介護スタッフさんがいる一方で、利用者からは「気を遣わなくて済む」「ロボットの介護を積極的に受けたい」という声も聞かれます。

とくに入浴や排せつの場面では、人による介助で気まずく恥ずかしい思いをするよりも、ロボットに頼むほうが気がラクなのかもしれません。

介護スタッフがロボット導入を望む理由

介護職員の半数が腰痛に悩まされていると言われる、過酷な介護現場。
中腰で行うオムツ交換や入浴介助など、腰への負担は相当なものです。

このような肉体的負担が軽減されればと、ロボット導入に期待を寄せる介護スタッフも多くいます。

導入されるロボットの種類

介護の現場に導入され始めている介護ロボットには、大きく分けて3種類あります。

1)介護支援型ロボット

主に移乗・入浴・排せつなど介護業務を支援するロボットで、介護スタッフの肉体的負担を軽減することが目的です。

移乗介護での介護スタッフの腰への負担を減らせるだけでなく、認知症で身体に触れられることに抵抗がある方の心理的負担を減らすこともできます。

移乗介助機器には、介護スタッフが身体に装着して、スタッフの動きを補助する装着型タイプのものと、パワーアシスト機能を持つ非装着型の2種類があります。

2)自立支援型ロボット

利用者の身体に装着し、リハビリでの歩行を補助したり、食事摂取をアシストするロボットです。

歩くときの膝の痛みを軽減する装置を付けることで、億劫になっている外出を促すことができるだけでなく、いままで誰かに頼んでいた日常生活での動作も、ロボットを装着することで自分でできるようになり、利用者の心理的負担が軽くなる効果もあります。

荷物を運搬できる外出向けタイプと、屋内での立ち座りやトイレ移動をサポートする屋内向けタイプの2種類が存在します。

3)コミュニケーション/セキュリティ(見守り)型ロボット

利用者と会話を通じてコミュニケーションを取るロボットです。

「外に散歩に行きましょう!」と提案して外出を促したり、レクリエーションを指導したり、毎日、決まった時間に利用者の様子を家族に知らせる見守り機能を持つロボットも登場しています。

認知症やボケは会話の減少に影響すると言われるなか、ロボットとコミュニケーションを取ることで、認知症予防につながると期待されています。

ケアプランの作成もAIへ移行

介護ロボットの導入が増えるなかで、AIによるケアプラン作成も着々と進められています。

政府系ファンドの産業革新機構と介護大手のセントケア・ホールディング、日揮、ツクイなどが設立した新会社「シーディーアイ」では、愛知県豊橋市と協定を結び、今年の10月から市内5事業者で、約50人の高齢者のケアプランをAIに作成させる取り組みを始めます。

AIが作成したケアプランをケアマネージャーが確認し、利用者に合わせた調整を行った上で、実際に利用者へと提供。3カ月後に利用者の満足度・身体状況の改善度・ケアマネ業務の変化など、効果測定が行われます。

ケアマネージャーの業務軽減にどれだけ貢献できるか、注目が集まっています。

AI導入を早急に進めるための課題とは

介護ロボットの導入、AIによるケアプランの作成は、人材不足の改善策として政府主導で進められていますが、現場では不満の声も上がっているようです。

「技術は素晴らしいが、使い勝手が悪く、介護の実態に即していない」

「装着に時間がかかり過ぎる」

一方、ロボット介護機器の展示会などでは、最新の機器を体験した施設関係者から「想像以上に技術が進歩している」という声も上がっています。

来たる2025年を迎え、介護現場における人材不足がますます加速するなかで、介護ロボットやAIの導入は、急務であると言えるでしょう。

そのためにも、積極的に介護ロボットを導入し、使い勝手の悪さをメーカー側にフィードバックできるよう、介護施設とメーカー側の連携の強化が求められます。

さらに、肉体的負担のかかる作業をロボットに任せ、人の温かさを必要とする対応を人間がやる、という業務の棲み分けも、今後、現場の声を吸い上げながら考えていく必要がありそうです。