地域が支える認知症サポートについて

認知症患者増加の状況

介護が必要な65歳以上の認知症患者数は、2002年には149万人でしたが、2012年の時点で300万人を超え、わずか10年で倍増しました。
そして2015年には345万人まで増加。65歳以上の人口に占める割合は10.2%。
団塊世代の高齢化が進む2025年にはさらにその割合が増すと考えられています。

出典:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~の概要(厚生労働省)を基に三菱UFJ信託銀行が作成

認知症患者増加の理由

なぜこれほどまでに認知症患者が増えたのか。
歳を取れば身体だけではなく脳も衰えます。高齢になればなるほど認知症患者の割合は増加。 80歳を超えると5人に1人以上、90歳を超えると2人に1人以上が認知症になると言われており、認知症は誰もがなる可能性があるのです。また、身体の老化と異なり、脳の衰えはなかなか目に見えず発見が遅れがちであることも、介護を必要とする認知症患者増加の一因と言えるでしょう。

新オレンジプラン

2013年に策定された「オレンジプラン」が「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現」を目指し、2015年に「新オレンジプラン」として策定されたことはみなさまご存知のとおりです。認知症高齢者にやさしい地域づくりに向けて、認知症という病気に対する啓蒙も含め、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援を包括的にケアするための戦略が進められています。

(参考)新オレンジプランの7つの柱

1)認知症への理解を深める為の普及・啓発の推進

2)認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供

3)若年性認知症施策の強化

4)認知症の人の介護者への支援

5)認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

6)認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーション、介護モデルなどの研究開発及びその成果の普及の推進

7)認知症の人やその家族の視点の重視

認知症患者増加に向けた各取り組み

国が「新オレンジプラン」を推し進める中、介護業界のニュースにも認知症に関する取り組みの話題が増えてきました。

武田病院グループでは、今年の三月に京都府宇治市の補助事業として「京都認知症総合センター」を開設。認知症の初期から人生の最終段階まで、暮らし慣れた地域で顔なじみのスタッフから安心して介護を受けることができる総合施設として、認知症の人を支えるモデル構築を目的とした施設の運営を始めました。

予防の分野においては、奈良県天理市がKUMONでおなじみの「公文教育研究会」と「慶応義塾大学SFC研究所」と共同で「脳の健康教室」を活用した成果連動型支払いによる事業を実施。参加高齢者の認知機能をはじめとする成果目標をすべて達成したことが話題となっています。

認知症の高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるためには

厚生労働省は、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」を全国で養成。サポーター数は2018年3月末時点で1千万人を超えましたが、高齢者介護に携わっていない世帯や個人においては、「新オレンジプラン」も「認知症サポーターキャラバン」も、あまりなじみのない言葉のようです。

認知症高齢者や介護家族が、住み慣れた場所で周囲に見守られながら安心して暮らし続けるには、近隣の理解とサポートが必要不可欠です。

日々のニュースであまり取り上げられることのない「新オレンジプラン」「認知症サポーター」といった取り組みが、日常的な会話にのぼるくらいに広く知られるように、介護業界に携わるものとしてなにができるかを考えていきたいと思います。

※認知症サポーターキャラバンについて詳しくはこちら