「外国人技能実習制度」介護職種追加について

外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度は、1993年に導入された制度で、日本で学んだ知識や技術を外国人が自国の経済発展のために持ち帰ることを目的として始まりました。

ただ、実際には、国内外から「低賃金労働者の確保に利用されているのでは?」という批判の声もあり、賃金未払いや長時間労働など、問題点も指摘されています。

介護職が追加される理由と受け入れ要件

そんな中、本年11月1日より、いよいよ介護職も外国人技能実習制度の対象職種に追加されますが、外国人技能実習制度の本来の主旨から外れることのないよう、

「介護先進国である日本の介護技術を自国に持ち帰ってもらうことが目的」
「介護人材不足への対応を目的とするものではない」

とされています。

また、これまでの本制度の問題点を踏まえ、

「経営が安定している施設であること(設立3年以上)」
「常勤職員数30人以下の場合、常勤職員総数の10%までを上限とする」

など、受け入れ施設の要件も細かく定められています。

2025年には約38万人の介護士不足に陥る介護現場

「介護人材不足への対応を目的とするものではない」とされてはいるものの、現在の深刻な人材不足状況を鑑みても、「2025年には38万人の介護士が不足する」と推測されている実情においても、事業所としては11月の改正に期待してしまうのではないでしょうか。

外国人スタッフ受け入れ成功のカギは?

2008年に始まったEPAに基づく外国人受入制度

介護事業所の外国人採用としては、2008年に経済連携協定(EPA)に基づく介護人材の受け入れが始まっており、フィリピン・インドネシアおよびベトナムから約2,800人の外国人が来日しました。

しかしながら、その中で介護福祉士国家試験に合格した人数は、当初見込み1,200人の3分の1となる約400人。しかも合格者のほとんどが帰国してしまったと言われています。

介護職に誇りを持つ外国人スタッフ

EPAを通じて来日する外国人の中には、看護系大学を優秀な成績で卒業しているエリートもおり、「指示を待たずに率先して動くスタッフが多い」「大家族で暮らした経験から、お年寄りにフレンドリーな対応ができる」など、現場での評価は高いようです。

求められるのは受入先の指導力

外国人スタッフの意識の高さ、真面目さ、フレンドリーさには期待が寄せられるものの、難しい専門用語や方言を理解できるのか、詳細な記録付けなど日本語による事務作業が可能なのか?という不安の声もあがっています。

ポテンシャルの高い外国人スタッフを受け入れ、彼らの能力を「単純労働のみ」ではなく、最大限に活かしてもらうためにも、受け入れ側である事業所の指導力が重要となってきます。

しかしながら、現在の事業所は慢性的な人手不足で、ベテランスタッフも現場対応に追われており、人材育成のノウハウが確立されていないのが現状です。

人材不足解消手段のひとつとして、外国人スタッフ受け入れを検討している事業者様においては、人材育成を外部委託することを視野に入れ、委託費用を捻出するための準備を進めていくことも必要かと考えます。